公認会計士・税理士の藤沼です。

個人事業主として売上が安定してきたら、「法人化」(法人成り)を考え始めますよね。

一般的には「利益が1,000万円前後」が法人化の目安と言われていますが、本当にそうでしょうか?

今回は、公認会計士・税理士の私自身が法人化した際に考えた3つのポイントをご紹介します。

法人化した際の金銭的メリットをシミュレーションしたい方には、おすすめの内容かと思います。

 

個人事業主が法人化した場合、大きく変わる項目は4つ。

私が法人化を考えた際、(金銭面で)考慮したポイントは次の4点です。

  • 税金はどのくらい変わるか
  • 経費計上による節税額はどのくらい変わるか
  • 社会保険料はどのくらい変わるか
  • 法人のランニングコスト

おそらく多くの方が「節税ができるらしい」という理由で、法人化されます。(もちろん、法人化による信頼性向上も1つのメリットではありますが。)

しかし、具体的に「何がいくら変わるのか」はあまり知られていません。

また、大きく変わるのは税金だけでなく、「社会保険料」も大きく変わります。
この点も考慮に入れ、法人化の可否を考えるべきです。

法人化した場合に節税できるモノ

大きく節税できる項目は、次の2つです。

  • 事業所得にかかる税金
  • 家賃として計上できる経費の金額

① 事業所得にかかる税金が変わる

個人事業主の場合、事業から得た所得は「事業所得」となり、所得税がかかってきます。

例えば、売上高が600万円、経費が200万円だった場合、所得金額は400万円となります。

ここでは簡易的に、所得税率が20%だった場合、80万円が納付すべき金額となります。

 

一方、法人の場合は、売上高が600万円、経費が200万円、自分への給与(役員報酬)を400万円とすることができます。

すると、所得金額はゼロとなりますから、法人税額もゼロとなります。

ただし、個人としては400万円の給与所得が発生しますから、ここに所得税がかかります。

しかし! 給与所得にかかる所得税の計算では、400万円にそのまま所得税率を乗じるのではなく、一定額を控除してから所得税率を乗じます。

ここでは簡便的に、給与額の30%が控除されるとします。

すると、400万×(1-30%)=280万円が所得税の課税対象となります。

つまり、280万円×20%=56万円が最終的な納税額となります。

 

個人事業主の場合は80万円かかっていた所得税が、56万円で良くなりますので、24万円ほどお得になる計算ですね。

このように、単純に法人化することで、支払うべき税金が安くなります。

② 家賃として計上できる経費の金額が変わる

ここまではよく知られているお話でしたが、ここからはあまり知られていないお話です。

個人事業主の方は、自宅の「家賃」のうち、事業として使った金額を経費に按分されているかと思います。

たとえばブロガーの方は、床面積のうち10~20%程度を作業スペースとして利用されていることが多く、家賃×10~20%程度を経費として計上されていることでしょう。

 

一方、法人化した場合にも、自宅の「家賃」のうち、一部を経費として計上することができます。

しかし、計上できる経費の金額は、最大で50%となります。

ここでも具体的な金額を例に、節税額を計算します。

 

(前提)

  • 家賃20万円
  • 個人の場合:10%を経費計上
  • 法人の場合:50%を経費計上
  • 所得税率・法人税率はどちらも20%と仮定

個人事業主の方は、20万円×10%×20%=0.4万円が毎月節税できます。

法人になると、20万円×50%×20%=2万円が毎月節税できます。

つまり、法人化することで1年間あたり19.2万円も節税できる計算になります。

 

ちなみに、なぜ法人の場合に50%も経費計上ができるかと言うと、法人の場合には「社宅」として扱うことができるためです。

法人化することで、社会保険料が増える

ここまでは、法人化することで得られる経済的メリットのお話でした。

しかし、ここからはデメリットのお話になります。

1つ目のデメリットが「社会保険料」です。

社会保険料とは、たとえば国民健康保険・国民年金のことをいいます。

所得規模にもよりますが、法人化することで年間30万円ほど社会保険料の支払が増えると考えておけば良いでしょう。

特にスタートアップの方の場合は、金額的にも結構大きいですよね。

法人化すると、ランニングコストが毎月7万円発生

また、「法人税均等割り」という税金もかかってきます。

これは所得税の場合には課されず、法人税特有の税金になります。

均等割りとは、かんたんに言ってしまえば「利益に関わらず、毎年必ず払わなければならない税金」です。

この支払いが毎年7万円、必ず発生します。

簡易的に、法人化した場合の節約額をシミュレーションしてみる

ここまでをまとめ、個人事業主から法人化した場合の節約額を計算してみましょう。

  • 法人化による単純な節税額:+24万円
  • 家賃按分の増加による節税額:+19万円
  • 社会保険料の増加:△30万円
  • 法人税均等割りの発生:△7万円
  • 合計収支:6万円

ということで、スタートアップの法人化の場合、大体年間6万円くらいの節約につながります。

ただし法人化することで税理士を雇う場合、ここから税理士報酬を支払わなければならない為、最終的な収支はマイナスとなるでしょう。

まとめ:法人化したとしても、収支はプラスにならない。

ここではスタートアップ(利益が1,000万円程度)の方を想定し、シミュレーションしました。

スタートアップの場合、法人化したとしても節約額はプラスになりません。むしろマイナスです。

しかし、法人化のメリットは「信用力の向上」にあります。

法人化することでお客様からの問い合わせが増えたり、価格交渉で優位を得たりするケースは多いです。

個人事業主の方が法人化をされる場合には、「いくら節約できるかな?」という視点で考えるのではなく、「信用力の獲得」という視点でメリットを考えましょう。

ちなみに、私は利益額600万円で法人化しました。

法人化によるメリットは、顧客の獲得にあります。